朽ちた漁師小屋がポップでおいしい空間に! 海と夕陽とコロッケと/

3103croquette (鋸南町)

公開日: 2018年10月16日

もともとは、港町の朽ち果てた漁師小屋。今でもその面影がそこかしこに残る「3103croquette(サンイチゼロサンコロッケ)」は、鋸南町の静かな海岸、大六(だいろく)と呼ばれる場所にあります。お店を営むのは少しシャイで物静かな、でも口元にユーモアを携えた小藤田(ことうだ)さんご夫婦です。もし、海に求めるものが静けさと非日常ならば、一度は行ってみてほしいお店。都会でも田舎でもない、不思議な居心地のよさがあじわえます。 


お店に入るとまず目に飛び込んでくる楽しい風景外から見えるたたずまいはまさに「小屋」。なのですが、扉をあけるとそこにはポップとレトロが共存した、センスとオモシロにあふれた空間が広がっています。まず目につくのは、ユーモラスなたくさんのイラストに囲まれた大きなメニュー黒板。それから、廃材を利用したインテリアの数々とむき出しの床、むき出しの天井。なんだか楽しそうだぞと心躍ります。まるで異空間に来たようなお店で味わえるのは、絶品コロッケと本格インドカレー。オーガニックティーやチャイもていねいでおいしく、海を眺めながら飲める鋸南町の地ビールも格別です。 


我が子の大好物、コロッケバーガー

たどり着いたのは、「何もない」がある場所

「3103croquette」はもともとはイベント出店中心の店舗を持たないお店でした。千倉の「アートフリーマーケットinちくら」や館山の「市場のマルシェ」など、安房で有名な数々のイベントに出店。着々とファンを増やしていたのですが、当時から店舗を持ちたいという希望はあったのだそうです。転機は2015年、千倉で「安房暮らしの研究所」という雑貨店(南房総旅行のおみやげを買うなら間違いなくここ!)を営む菅野さんから、「おもしろい物件があるよ」と声がかかったことから始まりました。


行ってみればそこはおもしろいどころではない、廃墟と呼ぶにふさわしい小屋。「割れた窓から中をのぞくとボロボロで」と笑いながら話す小藤田さん。抜けた床板のあいだから草が生え、天井は使い物にならないほど(のちに屋根もなくなったとか)、けれど窓からの景色を見た瞬間ここにお店を開くことを決めます。


見えるのはただただ海だけ。聞こえるのは波の音だけ。そこには「何もない」がありました。


窓から光が差し込む店内

逆境も受け流して、自分たちの手でススム

この場所との出合いから、開店にむけて小藤田さん夫妻の手による改修の日々がはじまります。当初は3ヶ月の予定があっという間に時は過ぎ、2017年の夏の大型台風が鋸南町にも襲来…壁がなくなり、車はつぶれ、廊下まで押し寄せた波によってお店は無残な姿に…。「人ってこれだけのことがあると笑っちゃいますよね」。明るく笑い飛ばす、のではなくて、淡々と受け入れながらもどこかにユーモアが漂う姿勢。そんなおふたりの様子は、当時から続けるブログでもうかがえます。ご主人の書く、笑えるのにどこか哀愁ただよう文章は必見です。読んでからお店に行くと2倍楽しめるかも。 


不思議な店名の秘密はロゴに。テイクアウトもできます

優しい海が見える海辺のカウンター

「生活感を排除してぼーっとしてほしい」と話すのは奥様。確かにここでは仕事のことはうまく考えられないし、たぶんいちばんぜいたくな過ごし方は、変わらないようで刻々と変わっていく海を眺め続けることのような気がします。頭をからっぽにして。おすすめの席は海辺に面したカウンターです。夕刻、ここに座って沈みゆく夕陽を眺めてほしい。対岸には久里浜の街の明かりが灯りはじめ、運がよければ富士山も見えます。私が思う内房の海の最大の特徴は「向こう側がある」こと。泳いでも行けそうなほど近い場所に岸が見え、海に対して「広い」という想いは持ちづらい。小さい、だからこそ海との精神的距離が近い。そんな場所の、ほっとする優しい海が3103croquetteからは見ることができます。 


鋸南町の夕陽。こんな景色が見られるかも

特別な場所ってきっと検索ではわからない

今後の目標を聞いてみました。まずは変わらずに、この場所で続けていく。それからカフェ以外に広がっていくことも構想しているとのこと。たとえば店内に飾られた奥様の描くイラストは購入もでき、希望の絵を注文することもできます。最近頼まれたのはなんとヤギのイラスト看板。飾れば途端に3103ワールドにひたれます。それからほかにも楽しそうな構想がたくさん…でもそういったこともどちらかというと不言実行なおふたり。


「自分たちからのアピールが苦手なんです」と苦笑い。たとえば食材は土地の物を使った安心安全な野菜を中心とし、料理は素材にこだわりすべて手作りです。でもそれをことさら自分たちから発信することはなく、「実は…」という部分がとても多いように思いました。ある意味では時代に逆行しているけれど、ひみつが多い分発見も多くておもしろい。「なんでも検索でわかってしまう時代だからこそ、実際に来てわかる余白を残したいと考えています」。小藤田さんの話す言葉に納得。3103croquetteがほかのカフェとは違うところは、まさにその余白なのではないでしょうか。


常連さんの特等席はやっぱり窓辺

毎日にも特別な日にも。一歩足を踏み入れれば体験できる、静かな非日常。おいしいコロッケとカレーとともに、静かな時間を楽しんでください。


【店舗情報】

店舗名:3103croquette(サンイチゼロサンコロッケ)

営業時間:11:30~19:00

営業日:金、土、日(変更もあるためHPをご確認ください)

所在地:千葉県安房郡鋸南町大六ラングド舎内

駐車場:10台程度

Web:https://rangudosha.tumblr.com/

Mail:3103croquette@gmail.com

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