鋸南町を走る国道からすぐ、ほそい路地を入ると見えてくるのは木々にかこまれたお店。まるでムーミン谷のような、はたまたハイジが住んでいそうな…。手作りのブランコやすべりだいが楽しめるお庭を抜けると、いつ来ても馴染みのある場所に帰ってきたような懐かしい空間が現れます。
それが今回ご紹介するCafe海遊魚です。
奥は畳敷きで赤ちゃんでも安心です
じつはここ、夢破れて東京から戻り、腐っていた私を最初に受け入れてくれた場所。海しかないと思っていた故郷のこの町に出現していた、別世界のように居心地のよいカフェ。オーナーの東さんが「ひとめぼれ」したという土地から見下ろす海は、かつて私が、東京に向かって夢を叫んだ海でした(これ実話)。さて、海遊魚の安心感のヒミツはなんでしょう?
「多分、おしゃれすぎないからかな?」と笑う東さん。客層は老若男女様々。若いカップルがガイドブック片手に東京から来ている横で、スーパー帰りの主婦がコーヒーを飲み…たまたま居合わせたおじいちゃんは赤ちゃん連れ夫婦と笑いながらおしゃべりしていたりする。肩肘張らない空間に心からほっとします。
季節のパスタ「菜花とベビーホタテの豆乳クリームパスタ」
寒い冬には飲みたい「豆乳チャイ」
できるだけ地産地消で作ったお料理は優しくおいしく美しい。なかでもオススメなのは不耕起栽培で作った米粉を使ったワッフルです。中はモチっと、外はカリっと。味のしっかりとした生地に添える自家製ジャムもたまりません。イチゴやチョコ、メープルのような定番から甘夏やゆずなど大人な味もあり、どれにするか迷ってしまいます。
訪れたら食べてほしいワッフル。子どもも大好きです
今や海遊魚の代名詞ともなったキッズルーム。冒頭の画像がそれ。広々としたお部屋にたくさんのおもちゃが並び、完全個室のため誰に迷惑をかけることもありません。子どもを遊ばせながら、ゆっくりとお茶を楽しむ…何でもないような時間がこんなにありがたいとは! 私自身、子どもをもつまでは知らなかったことです。
窓からは鋸南町自慢の海。気持ちのよい風を感じながら、きっとおしゃべりもはずむはず。キッズルームと言っても大人のみの予約も可能ですから、女子会やママ友のあつまり、カップルでの利用にもぴったりですよ。
キッズルームから見える鋸南町の海
カフェだけではないのが海遊魚のおもしろいところ。まずはガラス作家さんとしての顔。店内で使うグラスや一輪挿しは東さんの作品ですし、サンドブラストというお好きな絵柄や文字を刻むガラス工芸はお気軽に体験することもできます。房総旅行の思い出に、自分でつくったガラスを持ち帰っても楽しいかも。
それから田んぼ作り。まだまだ趣味…といいながら今年で3年目。これからは作った米粉をいっそう活用できるように、菓子製造専用のキッチンも作りたいのだそう。
鋸南町に新しくできた「道の駅保田小学校」には海遊魚のお弁当やマーマレードが並び、町からの依頼で消しゴムハンコの作品を作ったりもします。今後は庭にツリーハウスを作りたいと楽しそうに話す東さんは、いっぽうでもうすぐ6歳になるお子さんのお母さんでもあるのです。その活躍の幅はおどろくほどなのに、なんだか軽やかにすら見えます。
店内に並ぶガラス小物。一部購入できます
継続は力なりがモットーだというように、何が仕事で何が遊びかなんて関係なくやりたいことをコツコツとやり続けてきた東さん。
「できないのはやらないから、やればなんでもできる」。そう話す姿は静かに力強く、とても魅力的です。例え田舎でも、いや田舎だろうが都会だろうがやりたいことはやれるのだ。そんなあたりまえのことを私に気づかせてくれたのは、この海遊魚というお店にほかなりません。
看板犬のクマ。テラス席はワンコOKです
春には菜の花がお店のまわりを彩り、夏はうちわ片手にかき氷(もちろんシロップは自家製!)。秋にはお庭でどんぐりひろいが楽しめます。そしてストーブをたいた室内のあたたかさが幸せな冬。
どうぞ大切なひとと、またはひとりでも。ちょっとだけ日常を休憩して、海遊魚で季節を感じてみてくださいね。まるで実家に帰ってきたような、嬉しさとなつかしさを感じることができるかもしれません。
【店舗情報】
店舗名:Cafe海遊魚
営業時間:11:00~夕暮れまで
定休日:不定休
所在地:千葉県安房郡鋸南町大六 1082-1
駐車場:10台程度
TEL:0470-55-4004