“つかず離れず”が心地いい、自分ペースのときを過ごせるカフェ/

CAFE TSUMUGI (館山市)

公開日: 2018年07月25日

館山の交流拠点施設である「“渚の駅”たてやま」。その通りをはさんで目の前に、一階にオフィスが入る二階建てのクリーム色のビルがあります。入口に足を踏み入れ階段を登っていくと、シンプルな外観からは想像できないカフェ空間が現れます。看板を見かけるたびに、訪れたいと思っていたカフェに、はじめて訪問しました。


カフェに入ると浮かんできた情景、なぜかバランスのよい空間


「CAFE TSUMUGI(カフェ ツムギ)」をはじめて訪れた私には、一瞬にしてひとつの情景が浮かんできました。それは私自身の祖母が’70年代に住んでいた平家の小さな家。革張りに木の肘掛けがついている一人掛けのソファに、ざっくりカギ編みのカバーが掛けられているそんな空間。古い柱時計や、歴史を感じさせる小物。とくにこだわりなく置いてあるのに、不思議とバランスが取れているそんな家でした。


開け放たれた扉からまず感じた店内は、私にとってどこか懐かしさを感じる空間でした。そのせいか、迎え入れてくださったオーナーの東静子(ひがししずこ)さんも、こころにスッと入ってくる方だと感じました。


まず入ってすぐに感じるのは、歩くたびにゆったりきしむ感覚が足元に伝わってくる、古材を利用した床。古材を扱うメーカーから東さん自ら取り寄せ、エイジング加工を自身でほどこし、設計にもたずさわったといいます。


楽しくなるほど多種多様、そのエッセンスを磨いた町


その一方で、形や色の違うイスなどが印象的な店内の家具は、とくにこだわりなく「もらいモノだったり、よせあつめ」と笑う東さん。リサイクルショップで見つけた柱時計や革張りのソファなど、アイテムのひとつひとつは、ともすると昭和のよく見たアイテム。それなのにアジアンテイストと、ほんの少しのアメリカンダイナーの要素を融合して、古くさいだけではないものに、うまく昇華させています。


「エッセンスはさまざまなのに、カフェというハコのなかで、ごちゃつかないそのセンスはどこからくるのだろう?」と単純に東さんに質問をしてみると、その感性は「上京し16年暮らした下北沢の”狭いところにギュッとつまった世界観”が影響しているのかもしれない」と話してくれました。


下北沢は若者が多く、世界観を詰め込んだような小さな店がたくさんある町。下北沢は今の「CAFE TSUMUGI」の空間デザインに少なからず影響を与えているのかもしれません。


リフレッシュのアジア旅が、いつしか自分主導のキッチンカーに


上京し下北沢に住みながら、働いていた東さん。OLを経たのち介護職に転職、長く働いた介護施設は職場環境がよく、二週間程度のまとまった休みを取ることができたそうです。その休暇を利用し、東さんは東南アジアを中心に旅をしていました。今では愛着があり、店内に飾られている小物なども、そういった旅で少しずつ手に入れていったモノだそうです。


そしてなんと、介護職を辞め、エスニック惣菜を売るキッチンカーを単身でオープン。大きな決断に思えますが、「おもしろそうって思ったんですよね。旅した東南アジアのごはんはどれもおいしかったですし」とさらりとしているのでした。オフィス街の“ランチ難民”が話題となる世相に、東さんのキッチンカーはマッチし、大盛況だったそうです。


そのキッチンカーで貯めた資金を元手に、地元・館山にカフェをオープンしました。お子さんが生まれ、ライフスタイルが以前と変化した現在の東さんに、あえてこんな質問をしてみました。「以前の忙しいキッチンカーと、今現在のカフェ。もし身軽だった場合、どちらを選びますか?」と。東さんは「身軽だったとしても、今のカフェスタイルをキープしたいですね」と答えました。


自分のお気に入り席が、きっと見つかる


カフェスペースに客がもとめるものは、さまざまだと思います。私がしっくりくると感じるカフェは、さらりとした温度感とほどよい距離感があり、自分のペースでホッとひと息つける場所。その意味で私にとって、はじめて訪れたのに、ここはまさしく“しっくりくる”空間でした。


店内には、訪れる方それぞれのお気に入りの空間やソファがあり、おもいおもいに時を過ごしているといいます。本を読んだり、仕事の合間や仕事をしながらランチをとったり。オーナーと話したい方は、自然とカウンター席に座るのだそうです。赤ちゃん連れの方は、ベンチソファに赤ちゃんを寝かせて、ゆったりおしゃべりとお茶を楽しみます。


オーナーの東さん自身が、“お客の時間をじゃましない”、“放っておいてくれる距離感”を保つことが、居心地のよさを生む“もてなし”と考えるとお聞きして、本当に納得でした。そういう絶妙な距離感を求める私のような客も少なくないと思うからです。


相手おもいがさりげない、こころを満たす料理とくつろぎ


カフェのメニューは、アジア料理が中心です。東さんによると「自分が食べて好きなもの、お待たせせずに出せるもの、お客様が喜んでくれるものを提供していきたい」と考えているそうです。


取材を通して私が感じたことは、“こだわること”と“こだわらないこと”の線引きが明瞭で、まず自分が好きなことが前提。それを押し付けがましくなく、お客に喜んでもらえる形に。だからまるで、切り取って自分だけの空間を与えられたかのように、くつろげるスペースになっているのだろうと思いました。


【店舗情報】

店舗名:CAFE TSUMUGI(カフェ ツムギ)

営業時間:11:30~17:00(LO16:30)

所在地:千葉県館山市館山1560-16

TEL:0470-24-0268

定休日:日・月(他 不定休あり)

Instagram:https://www.instagram.com/cafetsumugi2008/

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