鋸山のすぐ近く、富津市の金谷(かなや)にある「cafe edomons(カフェえどもんず)」。合掌造りの建物は、かつてはかやぶきだったことをしのばせ立派な造り。しかし驚くのは、店内へ一歩足を踏み入れたときです。異空間へ迷い込んだかのような感覚になる、まるで大人の秘密基地。囲炉裏があるかと思えば、骨董品もあり、コーヒーへの愛を感じる道具も所せましと並んでいます。きっと誰もがワクワクする、そんな場所です。
東京湾フェリー「金谷港」と、JR内房線「浜金谷駅」を結ぶ裏通りにたたずむcafe edomons。港から駅に向かって歩を進めると、鋸山(のこぎりやま)のギザギザとした独特な形状の岩肌が前方に見えます(鋸山の記事はこちら!)。その通りの右手にカフェがあります。
店内へ入るとすぐ目に飛び込むのが、囲炉裏やコーヒー豆を入れる樽の数々。そして、骨董屋に来たんだっけ?と錯覚しそうな年代物のあらゆるモノたち。カフェスペースへは土間で靴を脱ぎ、一段高い場所へ上がります。靴を脱ぎ一歩進むと、和モダンな棚にコーヒー豆がずらり。
部屋のふすまは開け放たれ、それをぐるりと取り囲む縁側廊下にも、コーヒーにかかわるものや、見たことのない道具たちがたくさん。ここはコーヒー博物館? 実験室? ビーカーやフラスコのようなものも並んでいます。
実験道具の正体は、氷出しコーヒーを作るためのもの
店内をぐるりと見回すと、絵画や日本人形、食器や玩具に至るまでさまざまなジャンルの骨董品があちこちに。まるでおもちゃ箱や秘密基地の中へ足を踏み入れた感覚がして。それなのに落ち着くのが不思議です。
その謎をひも解いていくことにしましょう。
好みの席につくと、田舎の祖父母の家に遊びに行ったような、くつろぎを感じさせてくれます。私が特に好きなのは梁。古き良き日本家屋は梁や柱ひとつひとつが重厚です。
お座敷席のほか、窓際のテーブル席や、仕切られた予約席、カウンター席があります。座敷奥は予約専用。大切な人とゆったり過ごしたいときに。
cafe edomons最大の魅力は、マスターの人柄だと思うのです。私は我が家へ帰ってきたかのような雰囲気に、「ただいま」と言いたくなりました。都内から足しげく通われる常連の方も多く、今では全国各地に加え、海外からのリピーターもいるそう。インバウンドで盛り上がっている金谷らしいです。客人を迎え入れる笑顔と優しい声のトーンに、一瞬で引き寄せられたのは、私だけではないようです。
マスターのアオヤマさんは東京育ち、東京在住で、今も毎日高速で通っているそう。都会ながらの粋なモノ集めと、田舎を代表するような古民家。一見カオスなのに不思議な輝きがあふれ出ている空間演出は、“東京から通う”というスタイルゆえのバランス感覚なのだと納得してしまいました。さらに、マスターの魅力はこれだけにとどまりません。
なぜ金谷にカフェを構えることになったのでしょうか。
「10年ほど前から、鋸山や周辺のお店が好きで毎週のように通っていました。そしてカフェを構えるきっかけとなったのは、東日本大震災の津波による風評被害です」。金谷は海と山の町。その地に住む知人に、「震災の影響で津波が恐いという心理からか、観光客がめっきり来なくなってしまった」と聞き、この地で町おこしのために何かできないかと、カフェをオープンすることに。
実は、“建物”にこだわっていたのではなく、町おこしのために自分ができることという視点から“カフェ”、そのための店舗探しという発想だったのだそう。そんなときに出合ったのが、飛騨から移築されたというこの合掌造りの家。カフェとしてよみがえらせました。オープン当初は建物の一部分、カウンター2席のみで営業していたのだとか。
コーヒーはお父様からの影響もあり、子どものころから自分で焙煎。コーヒーミルやマシンの数々は、中学生のころから少しずつ自身が集めていたコレクションなのだとか。そして骨董品の数々は、お父様が趣味で収集されたもの。
タイムトラベラー気分アイテムのひとつが、カチコチと時を刻む柱時計たち。長い針が12を指すたびに、「ボーン、ボーン」という音が次から次へと鳴り響きます。ほかにも座敷席には昭和を代表するようなブラウン管テレビがあり、現役で活躍中! 何が流れているかは、お楽しみ。
常時200種類以上あるという豆の中から、マスターが“今日はコレ”という豆をいくつか選び、毎朝焙煎し注文を受けてから豆を挽きます。好みの味を伝えると、嗜好に合った一杯を淹れてくれます。珍しい氷出しコーヒーも味わえますよ。バウムクーヘンは金谷で有名なお店のものを。
「コーヒーは心のBGM」と語るマスター。大切にしているのは、コーヒーを語ることではなく味わうこと、という言葉が印象的でした。思うところがあり、何度もうなずきながら話をうかがっている私にも、「輝いている人がいる街に、人は引き寄せられる。あなたも思いっきり輝いて!」と背中を押され…感涙。edomonsファンを虜にさせる不思議な魅力は、やはりマスターにありそうです。
富士山と夕日がきらめく海を感じる町の秘密基地。マスターが放つ空間で、あなたもタイムトラベラーになれるかも。
【店舗情報】
店舗名:cafe edomons(カフェえどもんず)
営業日:金、土、日、月、祭日(ただし、悪天候のときは休み)
営業時間:11:00~18:00
所在地:千葉県富津市金谷2185-2
駐車場:15台
Fecebook:https://www.facebook.com/cafeedomons/
TEL:070-6478-7778