海をのぞむ結願寺。リピーターの多い理由がある古刹/

那古寺 (館山市)

公開日: 2018年05月30日

ここ那古寺(なごじ)は坂東三十三霊場の結願寺(けちがんじ)で、創建1300年をこえる古刹。巡礼の参拝客も多く、御朱印好きな方も要チェックです。その昔、周辺は門前町として栄え、安房地域の歴史を語るには切っても切り離せない場所。


結願寺とは、巡礼のゴールにあたるお寺。昔の人は、長い旅路の最後にここから海や館山の街並みを眺めたのかな、足の疲れは一瞬でもやわらいだかな…と思いを馳せてしまいます。


私のイチ押しポイントは、なんといっても眺望のよさと心地よい静寂な空気感。補陀落山(ふだらくさん)那古寺といい那古山一体が境内です。頂上へと続く散策路も整備されているのでハイキングも楽しめますよ。


実はこちらのお寺、館山市内の各所から見えるので、館山を何度か訪れたことのある方なら、お寺に足を運んだことがなくても一度は見たことがあるかも。全国的にも珍しいお寺の祭礼や、縁日もご紹介。リピーターが多い那古寺。皆さんもその理由に気づくはず!


館山湾を一望できる穴場スポットと、森のアロマでリラックス


案内図

那古寺は、大きく分けて4つのエリアがあります。駐車場からすぐの「本坊エリア」、坂や階段を登っていくとある「多宝塔(たほうとう)エリア」と「観音堂エリア」、険しい階段を登っていくとたどり着く「式部塚(しきぶづか)エリア」。 


展望台からの景色

夕日が輝く街、館山。館山湾の魅力を堪能できる絶景スポット4選!」でも紹介した、「式部塚エリア」。まず私がオススメしたいのは、展望台からの眺望です。展望台までの道のりをご紹介します。 


本坊エリア

正面に見えるのが那古寺本坊。駐車場がすぐ手前にあります。本坊の左手前の坂を上ると、山の中腹に「仁王門」「鐘楼(しょうろう)」や「多宝塔」、一段高い場所に「観音堂」などがあります。


「本坊エリア」から、本堂へ続く坂 

まずは、館山湾一望への第一歩。坂の参道を登っていきます。車は入れないので、駐車場(無料)にとめていってくださいね。 


坂を上ると「多宝塔・本坊エリア」へ 

途中少し急ですが、子どもの足でも登れる坂道です。正面に見えるのは、仁王門。巡礼の方々が白衣で歩いている姿を見ると、厳かな気持ちになります。 


仁王門 

さて、突然ですが豆知識! お寺をお参りするときは、仁王門の前で一礼してから入るのが礼儀なのだとか。 


多宝塔エリア


桜の名所でもある那古寺。仁王門をくぐると、春は桜の花が盛大に咲き誇り、参拝者でにぎわいます。夏の深緑の季節も青々とした木立ちの中、深呼吸すると清々しい。 


観音堂 

多宝塔エリアから一段高い場所にある観音堂。約5年かけた「平成の大改修」を2008年に終えました。できる限り1781年の状態に復元されたそうで、一見の価値あり。


観音堂の前にはベンチがあり、そこでのんびりと館山市街地の景色を眺めるのも気持ちがいい。坂や階段を上り少し汗ばんだ身体に、海からの心地よい風が通り抜け、緑のそよぐ音が聴こえることも。



「観音堂エリア」から続く展望台「式部塚エリア」への階段 

いよいよ展望台へ。


およそ190メートルほどで到着です。展望台から見える眺望が格別の穴場スポット。「観音堂エリア」からのびる、段差が少しきつい箇所もありますが、ふんばりどころです。



途中で息が切れるほどの急階段が続きます。階段が朽ちている場所もあるので、注意してくださいね。鳥のさえずりや苔むす崖、そこに這うように伸びるツタを感じながら登れば、ほどなく分岐点へ。 



「潮音台」が、展望台です。もうすぐそこに絶景が。 



分かりやすい標識がついているので、迷うことなくたどり着けます。標識を背にすると、うっそうとした木々の中から、一筋の光が見えるかのように、パーっと光が差し込みます。階段の先に、東屋が見えてきました。そちらがお待ちかねの展望台。


展望台からの景色

展望台へ到着! 頂上のビューポイントまで来る方はそれほどいないので、景色と爽快感をひとりじめできることも。ひと休憩したら、山のおいしい空気をもっと味わいませんか。じつはもうひとつおすすめの穴場スポットがあるんです。


先ほどの分岐点までもどり、「式部夢見道」と呼ばれる散策路へ。



緑に囲まれていて森林浴をしながらハイキングすると癒される、個人的な穴場スポット。山頂もこちらを進んでいくとありますよ。



特に新緑の木かげや、清涼感あふれる潮風を感じられる季節のハイキングが気持ちいい。ぜひ深呼吸してみてください。森のアロマをたっぷり吸い込むと、心が開放感にみたされます。


アップダウンが多少ありますが、ところどころにベンチも。このまま散策路を道なりに歩いていけば山を抜け住宅地へと降りていけます。



御朱印ガールも注目! 坂東三十三観音霊場の結願寺


「御朱印ガール」という言葉もあるくらいの御朱印ブーム。書店には、女子受けしそうな御朱印帳がたくさん。お気に入りの一冊とともに旅をしてみても。


冒頭でちらりとご紹介したとおり、こちらのお寺は「坂東三十三観音霊場」の結願寺です。「坂東三十三観音公式サイト」(※1)によると、坂東三十三観音は「源頼朝の篤い観音信仰と、多くの武者が西国で見聞した西国三十三観音霊場への想いなどが結びつき」、鎌倉時代初期に開設されたそう。ということは西暦1200年ごろからの長い歴史を経ているのですね。


御朱印は納経所でいただけます 

また、結願とは「全てのお寺を巡り、最後のお寺を参拝した時のこと」(同サイトより)なのだそう。鎌倉の杉本寺からスタートして那古寺で結願、その道程なんと約1360km! 四国八十八ヶ所霊場めぐりが約1325kmとされているので、坂東三十三観音霊場巡りもなかなかの距離です。


巡礼をされる方にはとても有名なお寺なので、観光バスでの巡礼・参拝客でにぎわうこともしばしば。



さらに、「安房国札三十四観音霊場」の一番札所でもあります。巡礼に興味が出てきた方は「安房国札観音霊場巡り」(※2)をチェックすると新たな発見があり、おもしろいかも。ともに、御朱印をいただくことができます(有料)。


ちなみに結願を証明する御朱印は三十三ヶ所すべての御朱印がそろっていないと、いただけないそう。結願の重みを感じます。


左上に結願の御朱印 

余談ですが、この原稿を書いている最中に実家に立ち寄ったら、三十三ヶ所を巡った母の納経帳(巡礼専用の御朱印帳)を発見! こんな身近にいました、御朱印ガール。両親そろって結願しているそうです。


坂東三十三霊場巡礼用の納経帳 

※1 「坂東三十三観音公式サイト」 http://www.bandou.gr.jp/index.php

※2 「安房国札観音霊場巡り」 http://awa-junrei.jp/


門前町として栄え、安房地域の歴史深い場所


札所でもあるということは、歴史が深いお寺ということ。那古寺の歴史にふれてみましょう。


真言宗智山派(しんごんしゅうちざんは)の古刹である那古寺。房総里見氏と強い関係をもち、初代「里見義実」(南総里見八犬伝のモデルとなった人物)が、子息を住職につけ管理させるなど、安房地域の支配においても重要な寺だったことがうかがえます。



多宝塔 

ちなみに、本尊は千手観音菩薩。那古寺には、国重要文化財や県の有形文化財など数多くの文化財や宝物があるので、文化的価値も高いお寺。千手観音ファン、多宝塔ファンも、要チェックですよ。 


今でもなお美しい境内の桜 

ご年配の方にお話をうかがうと、毎年花見の時期や、祭礼、縁日には昔も安房地域の各所から参拝される方が多かったそう。茶屋や旅館が立ち並んでいたということからも、門前町として栄えた歴史を感じます。 


活気にあふれる観音祭礼や、トラディショナルな縁日


観音祭礼や縁日は、昔に限ったことでなく、今でも賑わいをみせています。特に毎年7月にとり行われる観音祭礼では、6台の山車と屋台がずらっと一列に並び、一日かけて町内をひきまわします。全国的にみても非常に珍しいお寺のお祭り。6台の山車や屋台が境内に集まる姿は迫力満点!



実は私も子どものころから祭礼に参加している一人。境内で蝉が鳴く季節になると、大人も子どもも指折り数え祭礼を待つほどの、一大イベントです。


彫り物や人形にこだわりがある山車が多いので、じっくりと眺めてみるのも楽しい。安房地域はお祭りが盛んな土地柄なので、夏から秋にかけては毎週のように笛の音と太鼓の活気ある音が聴こえてきます。



8月9日の「四万六千日」と呼ばれる縁日も有名で、早朝から夜まで参拝客が後をたちません。ちなみに、この日にお参りをすると四万六千日お参りしたのと同じご利益があるのだとか。歌謡ショーが行われたり、カラオケ大会があったり、出店が立ち並んだりと、昔ながらの縁日らしい雰囲気も感じられます。


「星まつり」 

また2月3日、節分の「星まつり」では、観音堂からくじ付きのみかんやお菓子がまかれたり。大人も子どもも皆福をいただこうと、境内は人の山に。 



ラッキーなことに、私はこんなに福をいただきました 

お釈迦様の誕生日とされる4月8日の「花まつり」では甘茶やお団子がふるまわれます。地元の方はその小さなお団子を持ち帰り、乾かしてお財布に入れておくとお金がたまるというジンクスも。私も入れていますが、たまったかどうかは…。



4月8日の「花まつり」 

大晦日には先着順で除夜の鐘を突くことができます。除夜の鐘を耳にする機会はあっても、突く体験はあまりないのでは? 夜中の街に響き渡る除夜の鐘は、耳を澄ませ聴いているだけでも、古き良き時代をほうふつとさせます。 



年間を通して行事もたくさんあるので、チェックしてから行くのも楽しいです。


静寂さもあり、賑わいもあり、館山市街も一望できたり。春の桜も、夏の蝉の声も、秋の海に落ちる夕日も、除夜の鐘もしかり。


遥か昔からこの場所で存在した、圧倒的で普遍的な堂々たる存在感。そして季節や行事によって多岐な表情をのぞかせる古刹「那古寺」。何度でも訪れたくなる理由がここにはあります。


【所在地情報】

所在地:千葉県館山市那古1125

駐車場:20台以上(無料)

TEL:0470-27-2444

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