“一瞬モノ”の家具を製作する工房が土日祝限定で開くカフェ/

CAFEべこ舎 (南房総市)

公開日: 2018年05月10日

南房総市のへそにあたる地域・旧三芳村に、国産の桜材を使用した家具を製作する「家具工房つなぎ」があります。その工房が、ショールームを兼ねた土日祝限定のカフェを開いています。限定カフェ「CAFEべこ舎(べこしゃ)」を、最寄りの道の駅付近から、歩いて訪れてみました。


道の駅三芳村・鄙の里から徒歩1分。案内看板をたよりに歩いてみると

「CAFEべこ舎」のある三芳地区は、富津館山道路・富浦ICより車で約15分。道の駅三芳村・鄙の里(ひなのさと)に面した道路に、カフェがオープンしている日は、“家具”の立て看板が出ています。鄙の里が目前にせまる、その一つ手前の路地を左に入って行きます。


50メートルほどの短い間隔で、案内看板が次々に現れます。まるで幼いころに体験した、オリエンテーリングのよう。新緑がまぶしい昼下がりに、ゆっくりと歩いてみました。手作りの看板が宝物のありかを示す看板のようです。子どものころに味わった、見るものすべてが新鮮に見える感覚がよみがえり、不思議と懐かしい気持ちが湧いてきます。

 

今回は付近で車を降り、風景を楽しみつつ歩いてみましたが、もちろん車で訪れることもできます。カフェに隣接する駐車スペースがあります。


牛舎をリノベーション、田園風景にとけこむカフェ

日本酪農発祥の地である南房総市は、いまもなお、のどかな田園風景が広がる地域です。「CAFEべこ舎」は、酪農をやめてしまいそのままになっていた牛舎を、いちからリノベーションし2014年にオープンしました。


丁寧な手仕事を感じさせる重厚な木製のドアを開くと、自然光が心地よく取り入れられたカフェスペースがあります。靴を脱いでスリッパに履き替えるスタイルは、まるで古くからの友人の家を訪れるような居心地のよさ。“舎長(しゃちょう)”の中田洋之さんが、迎え入れてくれました。


オーダー家具のショールームと聞くと、見るだけ・聞くだけでは、どうしても敷居が高く感じてしまうもの。ゆっくり見て、触って、「空間そのものを気軽に楽しんでほしい」と、カフェスペースを開いたそうです。


工房を開く際、数十件の物件をあたった中、この木造の牛舎を選んだ理由を、「趣きがあり風通しがよく家具工房にぴったりで、この偶然の出会いに感謝している」と中田さんは話してくれました。牛はもともと暑さに弱いため、牛舎は涼しい造りになっているそう。工房に活かす利点がマッチした、まさに偶然の出会いだったのです。


木やDIYが好きな人が集まる、ショールームを兼ねたスペース

「CAFEべこ舎」の内装は、窓枠ひとつとっても、桜材や地元産の杉などの自然素材で作られています。もちろん、コーヒーを飲むためのテーブルやイスも、この工房で製作されたもの。無垢材のぬくもりが感じられる作品のひとつひとつを手に取ると、深呼吸したときのような優しさを感じます。


その木の優しい風合いを求めてやまない人たちが、たびたびここを訪れるといいます。ときには舎長の中田さんと同じ志を持ちながら、進路に迷う学生が訪れることも。


「建物そのものを建てる大工の道もあるし、家具を製作するという道もある」と迷う学生。「結局は自分が決めることなんだけどね」と笑う中田さんでしたが、「参考になるなら」としばしば相談に乗るそうです。その温かい人柄を頼りに、遠方からやって来る学生の気持ちがわかる気がしました。


セルフコーヒーは200円。お好みのカップ・コーヒー豆を選んで

あらかじめ断っておくと、このカフェにはコーヒー以外のメニューはありません。お気に入りのカプセル式コーヒー豆とカップをチョイスし、セルフ方式でいれます。


常に置いてあるコーヒー豆のほかに、季節によって新製品のコーヒー豆が加わることもあるので、そのときの気分で選べます。お菓子などの持ち込みは自由なので、南房総の銘菓などを楽しんでみるのもよさそうです。


窓からの景色をゆったり眺め、自然素材の家具にふれる

窓には田園風景が広がり、菜の花だったり、トウモロコシだったり、季節ごとに違う風景が目に入ってきます。ここを訪れる人の多くは、忙しい日々を送るミドル世代。都会とは流れの違うゆったりとした時間に身をゆだね、「あそこで農作業をしているな」とか、「なごむわね」などと話しながら、コーヒーを飲むそうです。ここで日頃の疲れを癒し、また都会に帰っていくといいます。



どこを切り取っても絵になる空間


「CAFEべこ舎」 には、どこを見渡しても時計がありません。時間にしばられることなく、「極上の非日常空間を過ごしてもらいたい」そんな思いからなのでしょう。こだわりといえば、エアコンもありません。自然風を活かせる昔ながらの造りなので、流れるそよ風をさえぎることなく運んでくれます。


Webサイトもあるので、ネットを見てオーダーする方だけと思われがちですが、ネットをきっかけに訪れる方、近くにある道の駅・鄙の里に展示販売している作品を目にして足を運ぶ方、何度も南房総を訪れているリピーターなどが多くいるそう。中田さんも、そうやって訪れる方はひときわ嬉しく、心から歓迎すると話していました。


自身の製作する家具を“一瞬モノ”と評する中田さん。よい家具は“一生モノ”と呼ばれ、永く受け継がれていくというイメージがありますが、なぜ丹精こめ製作した家具を、“一瞬モノ”と呼ぶのでしょう?


「一生モノとは、一瞬一瞬の積み重ねであり、出会ったときの『いい』と思った感動が、長く使われ、永く残っていくことにつながる」と中田さんは考えるそうです。そうお聞きすると、“一瞬モノ”も、人との縁にも似て、味わいのある不思議なつながりを感じます。


“一生モノ”などというお仕着せがましい感じではなく、今この瞬間を大切にする“一瞬モノ”。そう考えると、そのときの出会いに愛おしさを感じることでしょう。


「人と人」「仕事と社会」さまざまなモノの「つなぎ」になるという理念

工房名になっている「つなぎ」とは、「人と人」「仕事と社会」さまざまな「つなぎ」になりたいという中田さんの理念からきています。


なかでも印象的なのは、「自然素材の木を、家具づくりを通して、お客様にお届けする」という「自然」への考え方と、「都会と南房総をつなぐ」という「地域」への考え方です。


ライターである私自身、南房総地域で生まれ育ち、違う土地で生活し、またこの地域に戻ってきました。南房総の自然の豊かさを再確認する日々です。「そういった自然の豊かさを発信し、都会との架け橋になりたい」そう思う私。中田さんの「つなぎ」の理念はリンクし、あらためて「南房総ならではのよさを、たくさん発信していきたい」との想いが強くなりました。


「いつまでも、この空間にとどまっていたい」そう思えるカフェ。ため息がこぼれる日々に疲れたら、ゆったりとした大自然の中にある、こんなカフェを訪れてみませんか?



【店舗情報】

店舗名:家具工房つなぎ ショールーム&CAFEべこ舎

営業時間:土・日・祝 11:00〜17:00(展示会等でお休みになる場合あり。Webにて要確認。)

所在地:千葉県南房総市上堀230

駐車場:あり

Web:https://www.tsunagi-kagu.com/

TEL:090-1605-0474

備考:平日の家具の相談・見学は事前に連絡。



 

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