Vol.2 台風被害の廃材で薪棚づくり。捨てられてしまうモノに新たな役割を与える循環型DIY

公開日: 2020年02月19日

2019年9月9日未明、台風15号が千葉県南房総エリアを襲いました。コンパクトゆえかつてない暴風をともなったとされる台風で、私たちのまちは一夜にして被災地そのものになりました。クルマで南房総エリアを走ると、いまだあちこちでブルーシートが目につきます。AWANOの通常のサービスを再開できる状態にはありませんが、今の私たちにできることとして、館山市内の農家民宿「土の環(つちのわ)」の再生の様子を発信していくことにしました。「土の環」オーナーの土屋さんと地元ライターによる短編連載です。(全3回)


【バックナンバー】
台風15号を経て――“暮らしの学び”とワクワクに満ちあふれている農家民宿の再生

Vol.1 築100年の古民家が台風被害に。瓦降ろしから始めたら、自然素材がどんどん出てきた!
Vol.2 台風被害の廃材で薪棚づくり。捨てられてしまうモノに新たな役割を与える循環型DIY
Vol.3 火とごはんを囲んで。台風15号から半年、復興しつつある「土の環」に人々が集う(最終回)


「土の環(つちのわ)」とは

2018年から、古民家と農園を舞台に、宿泊と農体験、ワークショップの企画を行っている農家民宿。農のある暮らしとからだケアをテーマに、「“食べる”を楽しみ、からだを楽しむ」を共有、発信。
http://tsuchinowa.com/
https://www.facebook.com/tsuchinowa.tateyama/



人目に触れず床を支え続けた木が、日の目を見るときが来た

12月のとある日。「土の環」を訪れると、木そのものを感じさせる立派な柱と、トタン屋根の小さな空間が母屋の横に作られていました。



この柱は大引(おおびき)といって、蔵の床を支えるために使われていたそうです。大引は、床束(ゆかづか)の上に地面と平行にわたしてある木材です。こんなに美しい木が人の目に触れない床下で、床を支え続けていたなんて、まさに縁の下の力持ち。1世紀という年月仕事を全うし、今人の目に触れる場所で新たなスタートを切ったようです。


もとは大引きだったこの柱が支える小さな空間は、アースオーブンを作る場所。アースオーブンとは、粘土や砂など身の回りにある天然資材で作られたオーブンのことで、ピザやパンなどを焼くことができます。そして、向かって右側の柱から伸ばして作られた骨組みが、今回作る薪棚(まきだな)です。


台風で飛ばされた瓦の屋根材を再利用。廃材で薪棚作り

台風15号の影響で瓦が飛ばされ、雨漏りしていた納屋の瓦を降ろしたとき、そこから出てきたたくさんの廃材。敷地内にまとめて置かれていた廃材は、杉の皮と竹、そして何に使われていたのか私にはわからない木材でした。「土の環」には古民家、納屋、蔵の三棟があり、どれも築100年を超える建物です。いずれの建物も台風15号による被害を受けています。


瓦の下に敷かれていたという杉の皮の山

じつはこれらの廃材、瓦の下に敷かれていた防水用の杉の皮と、下屋(げや)で瓦を引っかけるために使われていた竹。下屋とは、母屋から差し出して作られた屋根のことを言います。そして私がよくわからなかった木材は、屋根で使われていた下地板でした。このあたりの詳細は、ぜひ「Vol.1 築100年の古民家が台風被害に。瓦降ろしから始めたら、自然素材がどんどん出てきた!」を読んでみてください。昔の屋根がどういう構造になっていたのかが書かれていて興味深いです。


さて、土屋さんによると、今回作る薪棚は、杉皮を竹で押さえた杉皮葺きにするとのこと。これらの廃材を使い、薪置き場として新たな役割を与えます。


幼少期の記憶が今につながり、活かされて

土屋さんは2016年から「土の環」の古民家を改修してきました。ときには業者さんに依頼し、ときには自分自身でDIYをして。


製作中の薪棚の向こうが古民家。その向こう、左側に見えている緑の屋根が納屋

健康に関わる仕事をしてきた土屋さんにとって、家の改修経験はまったくありません。ネットで調べ、さまざまな現場を手伝いに行き、「土の環」となる古民家を改修しながらこの3年を過ごしてきました。自分の手で改修することに対し、「知識はないけど抵抗感もなかった」と言います。


土屋さんの実家は、千葉県北部に位置する代々続く農家。幼少期は茅葺の古民家で過ごしたそうです。小学生のころ、1人の棟梁にお願いして母屋を建て替えることになりました。土屋さんのおじいさんは、現場監督と材木の仕入れを担当。よい材木を買い付け、棟梁と2人で家を完成させたときには、3年という年月が過ぎていました。敷地内の納屋での生活を送りながら日々その様子を見ていた記憶が今もはっきりと残っていて、「家は自分でいじれるもの」と思っていたことから、自身で改修するのは自然な流れだったようです。


設計図はなし! 基本は現場合わせで進める作業

古民家の改修以外に、椅子やテーブルもDIYしている土屋さん。何を作るときも、「設計図を描いたことがないし、描けない」と言います。いつも現場合わせで、計画性なく進めるのがおもしろいのだとか。


いよいよ杉皮の屋根を葺く段階になり、杉皮を並べてみたとき、「なんか違うね」と土屋さんが言いました。たしかに、頭の中で描いていたイメージと、実際に杉皮を置いてみた感じではイメージが異なります。



縦向きに並べてみたり、横向きに並べてみたりして試してみましたが、何だかしっくりきません。「杉皮を切って短くしてみる?」という案も出ましたが、出した決断は「板葺きにする!」でした。


納屋の屋根改修で使った残りの下地材を持ってきて、実際に置いてみました。「んー、なんか違うね」と土屋さん。試行錯誤した結果、いろいろな長さの板を互い違いになるように配置することにしました。



これぞ、設計図のない現場合わせ。設計図通りに作るよりも、あーでもない、こーでもないと実物を置いて試してみるのが楽しいことを実感します。


人の環のサイクルが紡ぐ、被災した「土の環」再生への道

台風後の「土の環」の再生にあたり、クラウドファンディングに挑戦してみては?という案もあったそうですが、土屋さんはピンと来ませんでした。


甚大な被害をもたらした台風15号。被害の報道が遅れたものの、報道直後から県内県外からたくさんの方々が災害ボランティアとして南房総エリアに来てくれました。私も自宅が被災し、さらに台風直後は孤立したエリアに住んでいるひとりでした。孤立が解消されると物資を手に私たちの元を訪れ、声をかけてくれる人たちと出会うたびに、胸が熱くなったことを思い出します。


手を差し伸べ、力を貸してくれるボランティアの人たちや、復興を目指す地域の人たちのために「土の環」を活かしてもらえたら。クラウドファンディングよりも、そのほうがずっと「土の環」らしくてしっくりくる。そんな思いを言葉にしていたら、いくつかの災害ボランティア団体とつながりました。そして、壊滅的な被害を受けた地域の農家さんにボランティアとして訪れた学生が宿泊したり、災害ボランティア団体の拠点として使ってもらったりしているうちに、「土の環」を利用したボランティアの方々などから少しずつ寄付が集まり、結果的に再生費になっていったのです。



午後、二段の棚板を設置していると、土屋さんの子どもたちが帰って来ました。3歳の長女が何を作っているのか尋ねると、「きみたちの家だよー」と土屋さんが答えました。2段ベッドのどっちで寝る?との問いに、「上の段は私!」と言って柱に絵を描き始めました。1歳半の長男は、工具箱と薪棚との間を何往復もして、あれでもない、これでもないといろいろな工具を手に薪棚へと向かいます。


薪棚完成! 土屋さんが指さしているのは娘さんが描いた絵

土屋さんが祖父から家造りの種を受け取ったように、この子たちも土屋さんからたくさんの種を受け取っているようです。新たな役割を与えられた薪棚に、廃材の薪が納められました。


次回はアースオーブンや「かまど」などの炉(ろ)づくりと、その炉を使ったごはんパーティの様子をレポートします。「土の環」のアースオーブンやかまどの材料はもちろん廃材。台風で割れてしまった瓦(Vol.1参照)を使うのだとか。廃材でつくるアースオーブンやかまど、その燃料の薪も廃材、その薪を収納する薪棚も廃材。なんという台風被害サイクル! 土屋さんの「環」の概念が、台風被害を通じてまたひとつ形になろうとしているのでした。


【「土の環」流】廃材で作る薪棚

1. 骨組み

炉(ろ)の予定地に向かって右側の柱2本を薪棚と共有し、コンクリートブロックを土台に新たな柱を2本立てます。横木と筋交い(すじかい)を入れて強度を上げ、屋根の垂木(たるき)を渡すため、両端に角材を1本ずつ入れます。



2. 屋根に垂木を渡す

角材を垂木として3本用意。



廃材を利用するときは、釘が付いたままのものや木が打ち付けられている状態の物が多くあります。バールを使って余計な木を取り除き、飛び出した古釘はグラインダーなどでカットしてから使用します。



準備した垂木を40cm間隔で置いてみて、ほどよい長さを見ながら測ります。電気丸ノコで3本同じ長さにカットし、インパクトドライバーでビス留めします。


3. 野地板・ルーフィングシート張り

端材の野地板を使うため、板の厚さが少々異なります。一度並べてみて、急な段差ができない並びに配置。野地板の長さが足りない箇所は途中で接いで、すべてビスで留めます。



墨付けをしてから電気丸ノコでカットし、軒先の長さをそろえます。



納屋で使用した半端のルーフィングシート(屋根用の防水シート)を2枚重ねて、タッカーで留めます。



4. 板屋根を葺く

納屋の屋根改修で使った下地材をさまざまな長さにカットし、いちばん下の列からビスで留めていきます。電気丸ノコを使用するときは、直角定規を当ててカットすると作業しやすくなります。



材の上の列でビス留めを行い、2列目は1列目のビスがかくれるように重ねて配置。長い板や短い板をあえて混ぜながら、上までビスで留めていきます。



左右に飛び出した板を電気丸ノコでカットして、端をそろえれば板葺き屋根の完成です。



5. 棚板を設置

2段の薪棚にするため、棚板を作ります。棚板を置く棚ダボの代わりに、適当な板を地面と水平になるように水平器を使って測ります。



棚ダボ板が入るように丸い柱をけがいてから、棚ダボ板を入れてビスで留めます。



棚ダボ板にもらい物の廃材板を置き、ビスで留めれば薪棚の完成です。




【次号】

Vol.3 火とごはんを囲んで。台風15号から半年、復興しつつある「土の環」に人々が集う(最終回)

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