週末は家族みんなで里山体験。凧作りと味噌作りに挑戦!/

古民家ろくすけ「『都市+田舎』2地域居住体験」 (南房総市)

公開日: 2019年02月13日

南房総市に、平久里下(へぐりしも)と呼ばれている地区があります。「にほんの里100選」にも選ばれたこの地区は、山に囲まれた農村地帯。ナビがなければ不安になってしまうような、奥地へと続く細い道。道路脇には水仙の花が咲き乱れ、ポツン、ポツン、と家が視界に入っては消えて行きます。通りにある駐車場から車を降り、高台にある古民家を見上げると、立派な茅葺屋根の母屋が温かい陽ざしを受けて建っていました。


ここは、「『都市+田舎』2地域居住体験」の舞台となる「古民家ろくすけ」。JR内房線岩井駅から車で15分ほどの道のりであり、車で都市部から訪れるときに安房の入口ともなる平久里地区の奥地に、古民家ろくすけは位置しています。


「『都市+田舎』2地域居住体験」は、南房総市が主催し、NPO法人千葉自然学校が運営する1泊2日の里山体験。2016年から始まった南房総市による「二地域居住推進事業」の一環であり、都市部の人たちに対して南房総と行き来する生活スタイルを提案する取り組みです。2018年度2回目の開催となった今回のテーマは、「凧揚げと味噌の仕込み」。1月13日、14日に行われた「『都市+田舎』2地域居住体験」の様子をレポートします。


子どもはリピーター、親は初体験の古民家ろくすけ


ろくすけに集まったのは、千葉県四街道市から訪れた鈴木真美さん夫妻と莉緒(9歳)ちゃん&菜々(6歳)ちゃん。そして、鈴木さんファミリーと家族ぐるみのつき合いという羽生有美さんと愛理(11歳)ちゃん&健人(8歳)くん。「子どもたちが千葉自然学校のキャンプでろくすけに来ていて、古民家に興味があった」と話す羽生さん。大人も参加できるプログラムを探していたところ、今回のプログラムを見つけ、すぐにママ友の鈴木さんに連絡をして同時に申し込んだそうです。


じつは、この体験の定員は2家族だけ。千葉自然学校が運営する古民家ろくすけでは、普段は一度にたくさんの子どもたちを受け入れる宿泊体験を行っていますが、親が一緒に宿泊する体験の場合は、それぞれの家族全員にとって深く濃い体験になるよう、2家族限定で行っているそうです。平久里という地域と密着した内容が多いのも、そういった狙いがあるためです。


さて、車とタクシーでそれぞれ到着した2家族。お父さんやお母さんたちは、夕食や朝食に使う食材を台所へ運ぶのに大忙し。子どもたちはといえば…いました! どこで拾ったのか、何やら棒を持って空き地で遊んでいます。


自分で絵を描いて、凧作りスタート!

「凧揚げと味噌の仕込み」プログラムを開始するべく、NPO千葉自然学校の佐藤玲子さんが集合をかけました。母屋の前に並べられた机と椅子に腰かけ、関係者の自己紹介。参加者同士はもちろんのこと、佐藤さんもキャンプや体験農園で子どもたちと接しているので、すでに和気あいあい。



凧作りの先生は、「かずさ凧の会」と地元の人たち。子どもたちは、大きな机を囲んで4人で座り、親たちは長机に並んで座りました。先生から「遠くに揚げるから、小さい絵は見えなくなる」とアドバイスをもらい、あらかじめひし形の凧の形にそろえられた真っ白な紙に、マジックで好きな絵を描きます。



保育園に通う菜々ちゃんは、大好きなドラえもんが印刷された紙から写し取り、さっそく色を塗り始めました。「凧を作ったことはある?」の問いにうなずいたのは、小学5年生の愛理ちゃんと、小学3年生の莉緒ちゃん。全国の自治体で行われている取り組み「放課後子ども教室」で、ビニールの凧を作って揚げたことがあるのだとか。



大きなリンゴの絵の中に、お母さんと、莉緒ちゃん、菜々ちゃん、そして猫と自分を描いた愛理ちゃん。リンゴは、愛理ちゃんのキャンプネームで、「あいり→リンゴ」とシリトリになるから付けたそうです。千葉自然学校が行うキャンプに参加している子どもたち。佐藤さんいわく、そういったキャンプでは、スタッフ側と子どもたちとの間に距離ができないよう、全員がキャンプネームで呼び合うのだそうです。ちなみに佐藤さんのキャンプネームは「かつを」。この日も、「佐藤さん」ではなく「かつをさん」と呼ばれていました。絵が描けたら、竹ひごとしっぽを糊付けして、糸をつければ完成です。さぁ、うまく凧揚げできるかな?


完成した子どもたちは大はしゃぎ。大人たちは先生から真剣に教わっています。


ちゃんと揚がるかな? 手作り凧を揚げてみる

午後は、自分で作った凧を軽トラの荷台に乗せて、凧揚げをする広場へと移動します。この日は雲一つない青空。高い建物も電線もなく、見渡す限り空と緑だけの場所。凧揚げの先生いわく、「走らない! 凧は走って飛ばすのではなく、揚げて空を飾るのです」とのこと。



凧揚げといえば、走って凧を揚げるイメージを持っていた大人たち。愛理ちゃんが、ヒョイっと凧を離して揚げる様子を見て、走らなくても簡単に揚がることに驚きます。



ある程度の高さまで凧が揚がると、子どもたちはもう飽きてしまった様子。さっさと凧糸を親に引き渡し、リポーターごっこをしたり、土手で遊んだりし始めました。子どもたちが凧揚げを楽しむ様子を眺めていようと思っていた親たちは、渡された凧糸を手に、意外に凧揚げを楽しんだようです。



空き時間があれば、いつでも探検が始まる

翌朝ろくすけを訪れてみると、ほかの子どもたちがゴロゴロしながらお喋りしている中、愛理ちゃんがまだご飯を食べていました。朝食を教えてもらうと、メニューはごはんと昨夜の残りのトン汁。子どもたちもピーラーを使って、皮むきを手伝ったそうです。ろくすけでは、朝ごはんを自分たちでつくることもプログラムに盛り込まれています。


愛理ちゃん&健人くんきょうだいは、ろくすけキャンプの常連さん。佐藤さんいわく、「健人くんは外遊びの天才! 何もなくても自然の中で遊べる」とのこと。おもちゃがないと遊べない子どもがいる中、健人くんのような子どもがその場に1人いると、みんながついて行って遊ぶそうです。愛理ちゃんは味噌作りも経験済みで、将来は、ろくすけの管理人になりたいのだとか。



味噌作りが始まるまでの時間、子どもたちは「ヤッホーの場所に行こう!」と元気にろくすけを飛び出し、竹を拾って杖がわりに歩き出しました。莉緒ちゃんは、昨日のリポーターごっこの続きと言いながら、カメラで動画撮影しながら進みます。


大人たちも後に続きますが、子どもたちの早いのなんの。あっという間にろくすけの坂を下り、段々畑を駆け上がって行きました。そして、段々畑の上に並び、向こう側に見えるろくすけに向かって叫びます。「ヤッホーーー!」「ヤッッホーー!!」。



水たまりの中に張った氷を見つけ、「ここは氷の発掘所だ」「ガラスみたい!」と言いながら棒でつついたり、取り出して触ったりする健人くんと莉緒ちゃん。自然にできた氷を見るのは初めてだそうで、愛理ちゃんも氷を手に記念撮影。


帰りは川に寄り道。「藻がある!」「タガメみたい? タガメだよ、これ!」とみんな大はしゃぎ。



しまいには、「ここでずっと遊んでいたい」と言い出す始末。「ダメよ、今日は味噌です」とたしなめられます。そこから何度、「行くよ~」「はい、行くよ!」と大人たちが帰りを促す声を耳にしたか、数え切れません。健人くんのズボンは、お尻まで泥だらけ。「そんな恰好じゃ味噌作りができないよ」と言うお母さんの言葉を聞いて喜んだのも束の間、ちゃんと着替えを用意していたお母さんはさすがです。


味噌大好きファミリーが作る、自分たちの味噌作り

菜々ちゃんに、味噌は何でできているか聞いたところ、にっこり笑って「大豆」との返事が。どうやら、朝から大鍋で大豆を茹でている様子を見ていたようです。


いよいよ鈴木家と羽生家の味噌作りが始まります。材料は、平久里産の米糀と大豆、そして塩。味噌作りの先生は、千葉自然学校の遠藤陽子さん。「お味噌汁は毎日食べる?」との問いかけに、うなずく参加者たち。みんな、味噌汁だけでなく、生野菜をスティックにして味噌を付けて食べるのが大好きなのだそうです。


タライの中に入った糀を、「パラパラになるまでほぐしてください」と遠藤さんが言うと、「ハッピバースデー、トゥーユー」と急に歌い出す健人くん。「今日は誰かの誕生日?」「味噌の誕生日だ!」と誰かが答え、和やかなムードで作業がスタート。



ゆでたての大豆が運ばれて来ました。糀菌が死なないように、ゆで上がった大豆を25~40度まで冷まします。「見えない~」と健人くんの声がするので見てみると、湯気で眼鏡が曇っていました。



加える塩の量を計算するため、家族から計算が得意な人がホワイトボード前に集合。羽生家代表は愛理ちゃん、鈴木家代表は莉緒ちゃん。菜々ちゃんも近くで見守ります。佐藤さん指導のもと、引き算や掛け算の授業さながら。導き出された塩の量を計って、糀とよく混ぜ、冷ました大豆も加えて味噌すり機へ。



鈴木家の味噌すり機投入係は菜々ちゃん。羽生家は健人くん。にょろにょろと出てきた味噌の素を適当な大きさに丸めて味噌玉にするのは、お母さんと娘たち。お父さんは投入された材料をちゃんと機械に押し込む作業を担当。



今回の参加者にプレゼントされるのは1家族あたり5kgなので、作った味噌玉を計ります。鈴木家は姉妹で玉入れのように軽快に味噌玉を計りに乗せて、5kgピッタリ賞! おまけにもう一つもらいました。羽生家は、愛理ちゃんが慎重に一つひとつ味噌玉を選び、計りに乗せていきます。こちらも5kgピッタリ賞! おまけの一つをじっくり選んでいました。



さぁ、味噌玉を樽に入れていきます。空気が入らないように、勢いよく投げ入れます。遠藤さんにコツを教わった莉緒ちゃんは、菜々ちゃんに投げ入れる場所を指示しながらきれいにならしていきます。勢い余って、樽の外に投げつけてしまうのはご愛敬。


鈴木家は、姉弟が順番に投げ入れ、お母さんがならしました。ていねいに蓋をして、新聞紙で包んで蔵へと運び入れ、来年の9月までここで熟成させます。家族一丸となって、共同作業で作り上げた味噌、どんな味に仕上がるのか楽しみです。


あっという間の里山体験。もう帰るの~?

敷地内にある蔵へと味噌を運ぶ羽生家と、千葉自然学校の佐藤さん。

「みんなで後片付けをしましょう」とのかけ声に、莉緒ちゃんと菜々ちゃんは一目散にほうきを手にし、掃除を始めました。お父さんもちり取りを持って参戦。「早く掃除を済ませたら、お昼ご飯まで遊べるよ~」との声に、一段とスピードアップ。子どもたちはさっさと掃除を済ませ、外へと駆け出して行きました。



お母さんたちは「帰りたくない~」と言いながらも、「9月に味噌を取りに来るという口実ができました!」とうれしそう。日々の生活は忙しく過ぎて行くけれど、ろくすけで過ごした1泊2日は朝と夕方の散歩と、迫って来る3Dのような景色、満天の星空を堪能できて、心も身体ものんびり過ごせたようです。


「2時間以内で来れるから、週末にまた来たい」と話すお母さんたちとお父さん。子どもたちは、もう来月のキャンプに予約済み。ここにまたひとつ、都市部と地方をつなぐ体験が実を結び始めました。



【体験情報】

体験提供者:NPO法人千葉自然学校

Web:https://www.chiba-ns.net/

Facebook:https://www.facebook.com/chiba.ns/

TEL:043-227-7103

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