道の駅で甘い体験。女性パティシエのつくる優しいスイーツ/

アトリエボンボン (鋸南町)

公開日: 2019年01月09日

鋸南町にふたつある道の駅のうちのひとつ、「道の駅きょなん」内にあるお茶もできるケーキ屋「atelier bon bon(アトリエボンボン)」。かわいらしい店名のbonとはフランス語で「おいしい」という意味だそう。その店名のイメージどおり、扉を開けてまず目に飛び込んでくるのはかわいくてやさしげなスイーツたちです。思い出すのは子どものころ、母親に連れられていった町のケーキ屋さん。あのころは大きいケーキが食べられるのなんて誕生日かクリスマスくらいでした。ワクワクしながらショーケースとにらめっこをして、プレートに書いてもらう名前を注文して…。アトリエボンボンのスイーツには、ケーキが特別だったあのころのなつかしさとうれしさがつまっています。


お話をうかがったのはオーナーパティシエの網代ゆかりさんです。甘くておいしそうな香りいっぱいの店内で、お店の経緯とこだわり、そして大切にしていることをお聞きしました。


いつか自分の店を持つ。夢を夢のままにさせない努力と経験


パティシエの網代ゆかりさん。

「もともとは東京のスイーツ専門店やホテルのスイーツ部門で働いていたんです」。地元である鋸南町に戻ってきたのは25歳をすぎたころ。木更津のホテルオークラ(現オークラアカデミアパークホテル)に勤めたのち、当時鋸南町にできたばかりのスポーツ宿泊施設サンセットブリーズ保田のカフェ部門のリーダーとして働き始めます。


メニューの考案からスタッフの育成まで、小さなカフェはやることがたくさん。大変ながらもとても勉強になる日々でしたが、出産を機に退職。一度はサンセットブリーズに戻るものの「自分の店を持ちたい」という想いが少しずつ芽生えます。


それでもまだまだ現実的には考えられなかったという網代さん。幼い子どもをかかえ、店を出すなんて夢のまた夢…と思っていたころ、鋸南町の道の駅にテナント募集が出ます。最初にやってみなよと提案してくれたのはご主人でした。いつか叶えたい夢はチャレンジしなければ夢のまま。網代さんの挑戦が始まります。


家族、そしてスタッフとともに。支え、支えられてつくる職場

内装業に従事するご主人のサポートもあり、自分たちも一緒につくったお店。オープンしたときにはお子さんはまだ2歳だったというのだから驚いてしまいます。乗り越えられたのは家族の支えがあってこそ。そしてスタッフに頼ることを知ったからだといいます。


「最初は人を雇わず、ひとりでやる予定だったんです。でもそれだと自分がやりたいことができない。誰かに甘えることがうまくなれば、それだけ自分がやれることも増える」。アトリエボンボンのスタッフは30~50歳代の女性たちです。みな、子育てだったり介護だったりそれぞれに家庭の仕事と事情を抱え、助け合いながらいきいきと働いているようです。赤ちゃんをつれて出勤できるように、店内にベビーベッドが置かれたこともありました。通院が必要なスタッフには、都合をつけながら柔軟に対応します。ちょっとした工夫とみんなの理解があれば、女性はもっと働きやすくなる。仕事と育児の両立にいちばん重要なのは、人のやさしさなのかもしれない。笑顔ではたらく女性たちの姿に、そんなことを考えました。


小さなおやつもたくさん。選ぶのもたのしい。


食べたあとすぐにもう一個食べたくなる味

おすすめメニューはなんといっても「シュークリーム」。オープン当初からの人気メニューで、さっくりとした生地にシンプルで甘すぎないクリームがふんだんに使われ、飽きることのない味です。国産小麦や地元の食材、アルミフリーのベーキングパウダーを使うなど安全であることも大切なポイント。子どもを産んでから、いっそう気をつかうようになったといいます。遠方のリピーターも多く、また来たよ!と訪れてくれるときが何よりもうれしいそう。一個買ってその場で食べたばかりのお客さんが、おいしいからとたくさんおみやげに買ってくれることもあるのだとか。


ひとつひとつ丁寧に。

今、挑戦中なのはクレープの販売。まだ毎日はできませんが、少しずつ販売できる日数をふやしたいそう。それから地元商品や店舗とのコラボも前向きに考えています。安房地域ならではの食材、菜花からつくるなばなパウダーを使ったパウンドケーキは、小さな子どもにも大人気の一品です。


ゆくゆくはお菓子作りのワークショップ開催なども楽しそう。一歩一歩、やれる範囲で楽しみながら進みたい――。夢は続いていきます。


店先でぱくっ。道の駅なので駐車場や外テーブルも余裕があります。


定番から挑戦まで、やれることはなんでもやる姿勢

アトリエボンボンの隣には道の駅らしい野菜の直売所があります。たとえばそこでサツマイモやカボチャを買ってきて、クリームもジャムも一からつくる。できるだけ旬のものをつかって、最初から最後まで自分の手でつくる。「ホテルやスイーツ専門店に勤めていた若いころ、すべてをつくることができないのが疑問だった。ひとりの手で最初からつくりたい。でも、実際にそれをやってみてわかることは、そのころがあったから今があるのだということ」。ずっと勉強。ずっと積み重ね。付け焼刃ではできないこだわりが、ひとつひとつのお菓子にあらわれています。



網代さんの話をきいていると、安房で産まれ、都会で働き、戻ってきて地元に家族をつくった女性の言葉の重みを感じます。この地で助けあい、ともに楽しみ、生きていく。それはこの場所が故郷である人の決意なのではないでしょうか。アトリエボンボンのケーキにあたたかさを感じるのは、力強くしなやかに働く女性たちの姿に、「あの日」の母との思い出が重なるからかもしれません。


たとえば観光旅行の帰り道、道の駅でちょっと休憩するとして。甘いものが食べたいな。コーヒーも飲みたいな。みんなが本当に喜ぶおみやげを買いたいな。それから、安房が観光地からホームになるような小さな出会いがあったらいいな。そんな想いを叶えてくれるお店のひとつに、アトリエボンボンを加えてみてはいかがでしょうか。


【店舗情報】

店舗名:atelier bon bon(アトリエボンボン)

営業時間:10:00~17:00

定休日:日・月曜日

所在地:千葉県安房郡鋸南町吉浜517-1(道の駅きょなん内)

駐車場:有

Web:http://bonbon.webcrow.jp/about.html

Tel/Fax:0470-28-4003

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