サンドボードだけじゃない! 癒しスポットとしての砂丘、再発見/

砂山 (館山市)

公開日: 2018年11月28日

「月の沙漠を はるばると 旅のらくだが ゆきました」

この童謡の舞台となったのは千葉県御宿町という説がありますが、ここ南房総にもそんな憧憬を思わせる砂丘があります。


南房総に、砂丘?


そう、ここ「砂山」は、このエリアでもちょっと異色のスポット。場所は、房総半島の最西端・洲崎(すのさき)を南にまわって車で10分。ヤシの木越しに海を望む、南の島ムードの色濃い地域にそこはあります。子どもたちを連れて訪れてみました。


こんな風景、見たことない。一瞬で異国の砂漠へ


入り口には車数台が止められるスペースがあります。砂山自体は地元地区の管轄で、だれでも無料で遊びに来られるところ。車から降りて山のほうを見やると、ぽっかりと、そこだけ浮かぶように真っ白い斜面が現れます。日曜の午後。台風一過のその日、空がすこーんと抜けるように澄みわたり、先客は誰もいませんでした。私たちだけ、どこかの星に置き去りにされたような孤絶感。見たことも行ったこともない、砂漠。海で見慣れた砂浜とはまるで表情が違います。



秋とは言えどムンと蒸し暑いこの日、太陽がじりじりと照りつけるなか、ザッザッと砂を蹴りながら急勾配を登っていきます。触れたさきから崩れていく砂に足がとられて歩みは遅く、はぁはぁと喘ぎながら子どもたちと登っていきます。


さくっと登れるだろうと気楽に構えていましたが、なんだこの過酷な感じは…!おや、これは何かに似ている…そうだ、雪山登山だ!と気づきました。私は登山が趣味で冬の山も大好きです。さらさらと捉えどころのない形状、全体として巨大な質量、そして雪(ここでは砂だけど)が音を吸収することで現れる独特な静寂。砂山と雪山は、暑さと寒さという点では正反対なのに、おもしろいことに共通点がいろいろあるようです。そんなことを思索しているうちに頂上へ。


ピークから海を振り返る、ごほうびの風景


歩いてきた道を振り返ると、パールのように海が光っていました。平砂浦(※)の海岸線をなでて来た海風が頬に届きます。実はこの砂山、平砂浦の砂が巻き上げられて自然にできたもの。頂上付近の海抜は約80メートル、海までの距離は約1キロメートル。強い西風…冬には「おおにし」と呼ばれ恐れられるほどの強風が、文字通り一粒ずつ砂を運び、積み上がってできたのがこの山なのです。

(※)平砂浦…洲崎の東南部に、5キロメートルにわたって弓なりに広がる砂漠状の砂浜。


今よりももっと広かった! 生き物の育たない砂丘

地元・坂井区の区長さんにお話を伺う機会に恵まれました。区長さんが子どものころ…昭和30年代にはこの砂山は「今の二倍」も大きかったとのこと。下から見上げて砂丘の右部分にある草地の丘一つがまるごと砂丘で、今の駐車場の隣には自然にできた大きなため池もあったそうです。周辺環境の変化などによって、数十年かけて草地化が進んだようです。




砂地になぜ植物が育たないか? その理由は、風によって砂が常に動き、水を蓄えることができないのと、風によって植物が砂に埋もれてしまうから。いずれにせよ、地球の歴史の中で、何千、何万年とかけてできた地形がある一方で、こんなにもやすやすと変わってしまう砂丘の流動性に驚きました。


「儚いもの」。砂の城、砂時計、砂絵…砂の造形物に対して感じる切なさは、それが形状をとどめないという儚さから来ているのでしょう。


さらに奥へ。秘境とも言える砂の塊の世界

頂上を越えた先に、砂山を観光スポットにした“スキー場”があります。薮の間を抜けると、また息を飲むような大きな風景が広がっていました。



どんどん先に駆けていってしまう子どもたち。「おーい!」と呼んでも、砂が音を飲み込んでしまい、声は届いていない様子。不思議な静寂が、より濃くなりました。話し声が聞こえないまま、子ども達がはしゃぐ姿を見ていると、音のない古い映画のような、月面の風景のような…なぜか“白黒の世界”と重なって見えました。


昔から、砂山は特に何ということもない、「子どもたちの巨大な遊び場」だったのです。区長さんの昔話では、10人くらいのグループで、大人が作ってくれた竹のスキーを持ってよく滑りに来たとのこと。今よりもっと高かったという山頂からうまく滑れるように工夫して遊んだ、と。昭和30年頃の、想像では着物姿の子どもたちの姿が、今せっせとソリを引いて遊んでいる我が子らと重なり、しばし時空が入り乱れて恍惚とした、秋の砂山でした。



ここは全国でも珍しいサンドボードスポットだった!

砂山ではスノーボードならぬ「サンドボード」を楽しむことができます。実は館山の砂山は、全国でも珍しいサンドボードができるスポットの一つ。私もちょっと試しにやってみました。斜度のある砂の斜面を四つん這いのようにして登ります。ちなみに、翌日は普段使わない筋肉が痛くて悲鳴をあげていました。



ピークで登頂の気分を味わい、いざ…! と下を覗くと、かなり急で正直ひるみました。私はスノーボード歴は長いですが、サンドボードは初めて。おそるおそる板の上に乗っかってみると、少しずつ板が滑り出し、どんどん加速していき、やっぱり怖くなって身体ごと転がってブレーキ! このスリルが練習を積めば楽しさに変わるのでしょうね。


館山市街からよく遊びに来ているという親子。上手に滑っていました(photo by フジイミツコ)

サンドボードは地元のお店でレンタル可。普通の雪用のソリや段ボールでも滑れます(photo by フジイミツコ)

「異国感」「儚さ」…この砂漠感を館山の砂山で。砂丘の世界の極まったシンプルさと静寂は、それだけで大きな癒しとなりそう。行ってみて人がいなければ、ますます非日常感を味わえます。らくだに乗っかって、砂漠を旅する人のように。


【スポット情報】

名称:砂山(館山砂丘)

所在地:千葉県館山市坂井772

TEL:0470-22-2544(館山市観光みなと課)

関連記事

ページトップへ